加水分解酵素阻害剤の創製
背景・目的
核酸・タンパク質と並ぶ生体の基本構成物質である糖質に関連した産業技術は発展途上である。糖質関連酵素は、ウイルスの感染・細胞間 認識や癌の転移など多くの重要な生命現象に関与しており、その阻害剤に寄せられる期待はあらためて言うまでもない。それらの生産技術は ポストゲノム産業の有力候補であると同時に、多彩な生理活性の解明や制御に繋がり、その成果は医療分野を中心に幅広く貢献するものと期 待される。そのような考えから本研究では、その突破口として酵素阻害剤に着目している。分子設計と精密有機合成を通じて阻害剤の多岐に わたる可能性を明らかにするとともに、将来的な応用に対応する基幹技術の開発を目的としている。これらは、いわき明星大学 科学技術学部 生命環境学科 山浦政則教授との共同研究で行っている。また、平成14~16年度福島県知的クラスター形成事業の成果でもある。
新規阻害剤検索にリレーする有機化学的アプローチ
糖加水分解酵素阻害剤として2 or 2,5-置換-3,4-ジヒドロキシピロリジンに着目し(図1)、
①骨格構造となる全立体異性体を合成する。
②合成した全立体異性体を用いて系統的な阻害実験を行う。
③阻害実験の包括的な結果を元に各種類縁体・誘導体を合成する。
④各種類縁体・誘導体の阻害実験を展開して新規阻害剤を検索する。
という研究概略を計画した(図2)。
骨格化合物の合成
2-置換-3,4-trans-ジヒドロキシピロリジン類は酒石酸から光学活性環状ニトロンを経由する合成を計画し(図3)、2-置換-3,4-cis- ジヒドロキシピロリジン類は糖からの合成を計画した。そして、2-アミノメチル-3,4-ジヒドロキシピロリジン全立体異性体8種(図4)、 および2-カルボキシアミノ-3,4-trans-ジヒドロキシピロリジン4種(図5)の合成法を確立した。
系統的阻害実験
合成した2-アミノメチル-3,4-ジヒドロキシピロリジン全立体異性体、および2-カルボキシアミノ-3,4-ジヒドロキシピロリジンを用いて種々のグリコシダーゼに対する系統的阻害実験を行い、包括的な構造-活性相関を調査した。医薬への可能性を視野に入れ各業界への接触を検討中である。
用途
- ○ 生理活性天然物
- ○ 酵素阻害剤
- ○ 機能性材料
- ○ 医薬合成中間体
- ○ 研究用ツール
特許関連
- ニトロンを経由するヒドロキシプロリンの製法 特許開2002-88059
- ニトロンの新規合成法 特許願2003-56626
- ピロリジン誘導体の立体選択的合成法 特許願2004-052692
- 2-置換-3,4-ジヒドロキシピロリジン酵素阻害剤 特許願2004-052693
- 2-アミノメチル-3,4-ジヒドロキシピロリジン酵素阻害剤 特許願2005-042535
- 2-アシルアミノ-3,4-ジヒドロキシピロリジン酵素阻害剤 特許願2005-042536
- 光学活性1-ピロリン-N-オキシドの簡便合成法 特許願2005-042537
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